富士そばの働き方改革を解説

 富士そばとは

 富士そばとは、1966年に創業した「立ち食いそばチェーン」です。1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に110店舗以上を展開しています。

「立ち食いそばチェーン」といっても、東中野店を除く全店舗で椅子が導入されています。「立ち食い」のイメージを付けることによって、安価な上一人客でも立ち寄りやすいイメージをお客さんに想像させ、集客しています。



 富士そばは、創業者の丹 道夫(たん みちお)氏が貧困だった時代にそば屋で時間を潰していたところ「お兄ちゃん、もうそろそろ閉めるから出ていってちょうだい」と言われたことに対し寂しく思いました。その経験から、1972年に24時間営業(セブンイレブンよりも早い)を導入しました。また、「出ていってください」などの“冷たい言葉”も言わないように指導され、人情味がある店舗を作っています。

 経営方針

 富士そばの経営方針は、「従業員の生活が第一」です。創業者の丹氏は従業員に対しても「従業員を追い込んで100万円の売上を達成するより、みんなで楽しくやりながら80万円の売上を確保できるほうが絶対に良い。ほどほどに儲けて、精神的な余裕のある状態が一番。差額の20万円は、損ではなく、余裕代として払ったと考えれば良いのです」という考えを持っています。



 よくサービス業で「お客様あっての従業員」と言われます。では従業員がいなくてもサービス業は成り立つのですか?当然違いますよね、従業員とお客さんが同時にいて、価値(サービスや商品)と価値(労働)が交換されるからこそ、サービス業などのビジネスが成り立つわけです。あくまでビジネスとは価値の交換であって、「対等な関係」なのです。つまり、どちらが上で、どちらが下ということはないのです。この上下関係があると、支配や理不尽なことが起きるのです。例えば、お客様が神様なら、提供したサービスを無料で受けてもいいのです。反抗したら罰せばいいだけですから。神様を将軍と置き換えれば具体性が増すかもしれません。しかし今の時代にはできませんよね。つまり、再びですがビジネスとは「対等」なのです。



 まとめると、会社はお客さんも従業員も両方大切にしなければならないということです。従業員を大切にしていると、いくらか低賃金でも働いてくれるのです。しかし、大切にしていないといくら賃金を上げても離職率が高く人手不足になるのです。

 働き方改革 アルバイトにもボーナス・退職金が出る

 丹氏が母に言われた「お金がほしいなら、独り占めしちゃダメ。みんなに分けてやる精神がないと絶対に大きくなれない。」ということを言われました。さらに、丹氏も含め何か夢見て上京してきた人などは、お金がほとんどなく、1円でも多く稼がないといけません。その経験から富士そばでは、売上や利益が出た時にアルバイトにもボーナスや退職金を出しています。つまり、頑張った分だけフィードバックがあるということです。1時間普通に働いて1000円貰うより、少し頑張って1100円貰いたい人は多いです。



 人は基本的に、「仕事のコントロール量」、「仕事の多様性」、「フィードバック」、「困難さ」、全体性(仕事を最初から最後まで行うこと)がなければやる気は起きません。逆に、この5つが多ければやる気を出します。
 
 富士そばのボーナスは「フィードバック」と「困難さ」に当てはまります。「フィードバック」とは、仕事の成果による賃金アップや、誰かに認められた時の承認などになります。「困難さ」は言葉の通りです。より多くの売上・利益を出さなければならない「困難さ」と困難を乗り越えた時の「フィードバック」が、従業員が能動的に動くようにさせる上、やりがいを上げます。つまり、売上や会社の利益も上げるのです。また、やりがいがあれば離職率も減ります。
 
 能動的に動くということは接客技術も上がりますし、ボーナスを出し離職率が低くなると仕事のスピードや安定性も上がります。また、店舗運営にも協力的になり、「どうすれば売り上げがより多く上がるか」を考えたり、客数が少なかった場合人件費削減のため「早退」してくれたりします。



 筆者自身の経験ですが、SNSが導入されていない飲食店舗で「SNSを導入したらどうですか?」と言ったところ、「誰がしっかり管理するの?自分で管理してくれるならいいよ」と言われました。つまり、“手間”と“フィードバック”を天秤にかけて“手間”の方が勝ったわけです。しかもこの人は、売上が前年越えを連続で達成し「社長賞」をもらった優秀なはずの店長です。



 上記のことより、売上や利益を上げる上で「フィードバック」は、なくてはならないことが分かると思います。フィードバックがあれば通常の人件費(時給)が抑えられる上、売上・利益が上がるため、うまくフィードバックすれば損にはならないはずです。フィードバックがあることによって、成長していく企業になるでしょう。

 80歳を超えても現役バリバリの会長

 今現在丹氏は80歳を超えていますが、現役バリバリの会長です。いつも店舗廻りを欠かさず行っています。



 店舗廻りを行うことによって、店舗の良い点は吸収し全店舗に広め、悪い点は改善の指示が出せます。さらに、「会長が動いているなら自分もやらなきゃ」と思いやる気を出す人もいれば、会長からの承認(自分のやっていることが認められること)をモチベーションにする人もいます。つまり、店舗廻りを行うことは、実務の面だけではなく、人間心理学的にもいい効果が出るのです。

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